1/365 days
目を開けると、そこは灰色の世界だった。
「おや、裏切り者の名をもつ男。気分はどうだい、お水はいるかい?」
――と、思っていたら、とても甲高くてなんだかひょうきんな声が聞こえてきた。仕方なく、そちらに目をやる。
どうやら自分は寝台の上に横たわっていたようで、首を回しただけで灰色の世界は簡単に果てが見え、寝台の端の方からひょこりとのぞく、二対の視線と目が合った。
「……」
「ああ、もうっ。人のことを無視しようなどと、いささか勝手が過ぎるというもの。そうではないかね、裏切り者の名をもつ男」
どうも自分は夢を見ているらしい、と判断して寝返りを打とうとすれば、焦ったように声が上がった。それでもやっぱりひょうきんなその声に、しぶしぶもう一度視線をめぐらせ、相変わらず寝台の端からこっちを見つめる声の主をねめつける。
そいつは(全くもって非常にありえないとは思うのだけれど)、黒猫、に見えた。
見えた、とちょっと自信のない言葉になるのは、今までにそいつほど大きな猫を見たことがないからだ。ドーベルマンほどの大きさの猫だと。ふざけるにもほどがある。
そして、これまたこちらが目を疑いたくなることに、その猫の頭の上にいるのはどう見ても――そう、ヒヨコという生き物だ。それも、なぜか黒い。
目の前に展開する光景につっこめばいいのか、それとも非常識な光景を映す我が目を心配すればいいのか、反応に困って黙っていると、猫は満足そうに(そう、猫らしく!)ごろごろりと喉を鳴らした。
「ふむ、重畳重畳。なかなかに元気そうではないか。これなら、彼女もさぞ喜ぶはず」
「よろこぶはず」
したり顔でうなずく猫に、ひよこが上からたどたどしく相槌を打つ。
「……最近の猫は、いつから声帯が使えるようになったんだ」
それにそのサイズ、と。
そのいかにも珍妙な様子にかすれる声でついつぶやくと、問いかけが耳に届いたか、猫は器用に片眉を跳ね上げた。……見たくない。
「おや、魔女の隣にしゃべる猫はつきもの。それがいささか大きいとて、気にするにはあたるまいに」
「あたるまいにっ」
首をかしげる猫の上で、ずり落ちそうになって必死にもがきながらも、ひよこが誇らしげに繰り返した。
いや、十分気にすることだ。
そう突っ込もうとして、しかしそこでふと何気なく紛れ込んだ言葉に気がつく。
「……ま、じょ?」
「そう」
猫は自慢げにぴん、とひげを揺らした。
「ようこそ、裏切り者の名をもつ男。我らが主、魔女エチセーラの小さな居城へ」
あ、ごめんなさい。色々と追いつめられるというか煮詰められると、不意に創作ものを書きたくなる罠。
不死の男と不老の魔女(登場しなかったけれど)のお話。エチセーラ、はスペイン語でそのまま魔女のこと。男の人をユド、フーダス、ジュダ、どの名前にするかでちょっと迷い中。
わたしの一番書きやすいのって、実は上の黒猫のような、狂言回しみたいなキャラなので、二次ではなかなか出せなくてちょっと辛い。ナウシカの漫画版に出てくる道化なんか、大好きです。あとは……ダンテの2辺りに出てくる、あのピエロみたいな人。
というわけで、もうちょこっとだけ沈んできます。すみま、せ、ん 。
「おや、裏切り者の名をもつ男。気分はどうだい、お水はいるかい?」
――と、思っていたら、とても甲高くてなんだかひょうきんな声が聞こえてきた。仕方なく、そちらに目をやる。
どうやら自分は寝台の上に横たわっていたようで、首を回しただけで灰色の世界は簡単に果てが見え、寝台の端の方からひょこりとのぞく、二対の視線と目が合った。
「……」
「ああ、もうっ。人のことを無視しようなどと、いささか勝手が過ぎるというもの。そうではないかね、裏切り者の名をもつ男」
どうも自分は夢を見ているらしい、と判断して寝返りを打とうとすれば、焦ったように声が上がった。それでもやっぱりひょうきんなその声に、しぶしぶもう一度視線をめぐらせ、相変わらず寝台の端からこっちを見つめる声の主をねめつける。
そいつは(全くもって非常にありえないとは思うのだけれど)、黒猫、に見えた。
見えた、とちょっと自信のない言葉になるのは、今までにそいつほど大きな猫を見たことがないからだ。ドーベルマンほどの大きさの猫だと。ふざけるにもほどがある。
そして、これまたこちらが目を疑いたくなることに、その猫の頭の上にいるのはどう見ても――そう、ヒヨコという生き物だ。それも、なぜか黒い。
目の前に展開する光景につっこめばいいのか、それとも非常識な光景を映す我が目を心配すればいいのか、反応に困って黙っていると、猫は満足そうに(そう、猫らしく!)ごろごろりと喉を鳴らした。
「ふむ、重畳重畳。なかなかに元気そうではないか。これなら、彼女もさぞ喜ぶはず」
「よろこぶはず」
したり顔でうなずく猫に、ひよこが上からたどたどしく相槌を打つ。
「……最近の猫は、いつから声帯が使えるようになったんだ」
それにそのサイズ、と。
そのいかにも珍妙な様子にかすれる声でついつぶやくと、問いかけが耳に届いたか、猫は器用に片眉を跳ね上げた。……見たくない。
「おや、魔女の隣にしゃべる猫はつきもの。それがいささか大きいとて、気にするにはあたるまいに」
「あたるまいにっ」
首をかしげる猫の上で、ずり落ちそうになって必死にもがきながらも、ひよこが誇らしげに繰り返した。
いや、十分気にすることだ。
そう突っ込もうとして、しかしそこでふと何気なく紛れ込んだ言葉に気がつく。
「……ま、じょ?」
「そう」
猫は自慢げにぴん、とひげを揺らした。
「ようこそ、裏切り者の名をもつ男。我らが主、魔女エチセーラの小さな居城へ」
あ、ごめんなさい。色々と追いつめられるというか煮詰められると、不意に創作ものを書きたくなる罠。
不死の男と不老の魔女(登場しなかったけれど)のお話。エチセーラ、はスペイン語でそのまま魔女のこと。男の人をユド、フーダス、ジュダ、どの名前にするかでちょっと迷い中。
わたしの一番書きやすいのって、実は上の黒猫のような、狂言回しみたいなキャラなので、二次ではなかなか出せなくてちょっと辛い。ナウシカの漫画版に出てくる道化なんか、大好きです。あとは……ダンテの2辺りに出てくる、あのピエロみたいな人。
というわけで、もうちょこっとだけ沈んできます。すみま、せ、ん 。
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