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「――眠れないのか」
はじける焚き火の音にまぎれて耳に忍び込んできた言葉に、横になったままの肩が揺れてしまう。
しまった。
これでは肯定したも同然だとアッシュが歯噛みする前に、焚き火の向こうにいるはずの男がくつりと笑いをこぼした。
「……今、眠ろうとしていたところだ」
「そうか、それは悪かった」
罪悪感の欠片もなさそうな声が、さして長くもないアッシュの気を逆撫でる。
思いきり眉を寄せながら、アッシュはくるまった毛布の中でことさらに身を縮めた。寝返りを打って男の顔を見ないのは、最後の意地だ。
……確かにここのところ、眠れていないのは事実だった。
アッシュが今一緒にいるこの男に拾われてから数週間が過ぎていた。その間に、頑固なチョコボの手綱を引いて不毛なこの荒れ野を延々と歩くことにも硬い地面に毛布一枚で寝転がることにも慣れつつあったが、ただ眠りに落ちるこの時間だけは未だに怖かった。
目を閉じれば、あの日のことが昨日のことのように脳裏によみがえる。アッシュが自分の無力を思い知らされた、決定的な日が。
きちんと眠らないと明日に支障をきたしてしまう。それは分かっているのに、身体はどうしても従ってくれない。
ほら、今もまぶたを下ろせば、暗闇から伸ばされるいくつもの助けを求める手が、悲痛な声が、ひたりひたりと迫ってきて、
じゃらんっ。
不意に不協和音が耳を衝いて、アッシュの思考回路を切り裂いた。驚きすぎて、反射的に毛布を指が白くなるまで握りしめてしまう。くぇぇ、と近くにつないだチョコボが寝息をもらした。
首だけをひねってうかがうと、男はいつの間にやら小さな弦楽器のようなものを手にしていた。一本一本弦の様子を確かめるように爪弾くその手元に、今だけは赤く染まった髪が幾筋も細く垂れている。
「――たまには何か歌わねば弾き方すら忘れてしまいそうだな」
独り言のようにそうごちる男と楽器とを、アッシュは先の意地すら忘れてついつい見比べてしまった。
「あんたが、歌うのか?」
「他に誰がいる」
「……歌えるのか」
「まあ、一通りのものはな」
非常に失礼なアッシュの質問にさして気を悪くした様子もなく、男は弦を調節し終えると楽器を抱えなおした。
「で、何を歌えばいいだろうか、小さな王子様」
ご所望なら、子守唄も歌うが?
明らかに子ども扱いする男のセリフに束の間むっとしたものの、ふと思い当ってアッシュは男を見上げた。炎越しに温度のない眼差しが見返してくる。
「なんだ」
「……なんでもない」
首を振って湧いて出たその考えを打ち消す。
まさか、眠れない自分を気遣ってくれたなんて、この男に限ってそんなこと。
「それで、リクエストは」
アッシュは考え込んだ。そう言われても、孤児院で育ったアッシュには巷でいうところの流行り歌など知る由もない。けれどもそうと言えば、この男は子守唄を本気で歌うに違いないのだ。なんと嫌な奴。
そう思いながらも考えるうち、不意にひらめくものがあった。視線だけで促してくる男に、アッシュは口の端をわざと上げて言ってやる。
「じゃぁ、」
あいのうたってのはどうだ。
そうくるとは思っていなかったらしい。
アッシュの言葉に目を見張った男は、夜空を軽く仰いで苦笑った。
「これはまた無茶なご注文を」
「あんたが言えと言ったんだろうが」
「……愛の歌と言っても何百とあるんだがな」
「その中から一つを選ぶのがあんたの仕事だろ」
わざと尊大に言い放ってみせれば、男はやれやれと首をすくめた。そのまま何を歌おうか真剣に悩みだしたらしい男に背を向け、アッシュは再び寝床に横になる。
別段、アッシュとてそんな甘い歌が聴きたかったわけではない。それでもそんなことを言ったのは、ひとえに男に対するちょっとした日頃の憂さ晴らしだ。
しばらく黙っていると、やがて夜の静寂にそっと一音落とされた。次いで、もう一音。
普段の男の態度からはかけ離れた印象のしんとした音色を聴きながら、アッシュは今度こそ眠れそうな気がして、ゆっくりと目を閉じた。
「やっぱり更新できなかったんだね」という生暖かな目が注がれている気がします。すみませんすみませんすみま せ ん 。
何が一番申し訳ないって、謝ってばかりの自分が一番申し訳なくて仕方ないですが。情けない……。
ええと、口先だけで繰り返していてもいかんいかんと思ったので、3月残りのノルマをここでずばっと決めておくことにしました。
とりあえず、以下が一応の目標です。守れなかったら指さして笑ってあげてください。
・brbをせめて10話まで。(わたしの中の区切りが10話なので)
・記念小話(7777hitと10000hit)
・コイメシスを1話
・うっかりアップし損ねたバレンタインデー小話をどこかにひっそりアップしてみる
何が迷惑って、四番目が一番迷惑。うっかりこっそりなお話です。多分そのうち気づかれないようなところに出現しています。気にしない気にしない。
記念小話については、7777hitのほうはもうほとんど完成しているので、今週中にはアップできると思います。一応区分は……み、mix、なの、かな? ちょっと微妙な代物であれです。ちなみに、10000hitはアシュルクなのか分からないアシュルクで(いや、アシュルクなのか分からないのはいつものことか……)。キーワードは「土鍋」です。
話変わりますが、実家ではパソとの心温まる触れ合いが制限された分、読書をみっちりしてきました。あんなに本読んだの久しぶりだ……。映画にも連れて行かれました。父と母、両方に。
こま家の両親は二人とも嗜好が反対のベクトルを指しているので、どうしても見たい映画の場合は娘を連れていくことが多いようです。でも、「ジャンパー」が観たい父と「四分間のピアニスト」が観たい母の間に生まれた娘としては「パンズ・ラビリンス」が気になってたまらなかったんですけどね!(なんでうちの家族はこうも趣味が違うのか!)……「パンズ・ラビリンス」、東京のレイトショーでまだやっているそうなので、そのうちこっそり観に行こうと思います。
もうひとつ。実家で、発掘、を、してきました。 過 去 の 遺 物 を 。(つまり、過去書いた文章の数々)
……なんというか、打ちのめされました。
本当は、ちょっと手直ししてサイトに上げられる文章がないかなーという出来心で漁ってみたんですが。
叩きのめされたね! 見事にね!
文章力とかが問題なわけではなくて(いや、それもあるのだけれど)、読み返していて砂が吐きたくてたまらなかったです。昔自分で言っていた「恋に恋する年頃の子が書いた恋話は読みたくない」がすごく胸にぐっさりきたんだぜ……!
青臭い、と言ってしまえばそれまでなのだけれど、恋や未来に対する展望というか希望というか、そんなきらきらしたものが行間に詰まっている感じで、内外ともに腐っている今の自分にはとても直視できなかった。うん。もうちょっと年月を置けば「ああ、あの頃は若かったなぁ」と笑ってすませることができるのかもしれないけれども。(でも今は無理でした)
高校生 とか 中学生 とか。そんな年頃の人たちの力ってすごいんだなぁって改めて思いました。あの頃あまりきらきらしていなかったはずの自分の文章でさえ、こうなんだもの。ちなみに小学生はきらきら、というよりも幼さが爆発している感じでむしろ微笑ましい。
あの輝きというかきらめきが、欲しい わけではないけれど、うらやましい と思うことはあるのです。
上の小話は、またもコイメシス設定のアッシュ坊やとセフィロスさん。仲がいいのか悪いのかわからないコンビです。(お題は自前)
拍手・一言レスは下にあります。今回、遅くなってしまって本当に申し訳ありませんでした。
拍手レス>
2/23 15:32 TOAの逆行めっちゃ~ の方へ
拍手ありがとうございます! 心の栄養にさせてもらってますっ。そして、返事が遅れまくってすみません;;
そう思ってくださる方がいると思うだけで、この弱小サイトも報われます(笑)。
しばらく更新していなかった分、これからじゃかじゃか頑張っていきたいと思っていますので、お付き合いいただけると嬉しいです!
3/3 0:52~0:55 コラール様へ
お久しぶりですー! 労りの言葉、本当にありがとうございます!
というか、え、喫茶店でも出るんですか、うどん!? それならせめて喫茶店に立ち寄っておくんだった……く、悔しいっ。
やっぱり香川といったら、うどんですよねっ。ほんとに、どうして出なかったのかしらあそこ……思うと余計切ない……。
それはそうと、コラールさんのご両親は香川出身だったのですか! じゃぁもしかしたら合宿の往復時に、どこかでよく知っていらっしゃる場所を通っていたかもですねっ。
そう考えると来年も行こうかという気持ちになってきました香川(笑)。でも、今度は合宿ではなく、旅行でじっくりと回ってみたいです。もしおすすめのうどん屋さんがあったら教えてください!(なんてずうずうしい)
たくさんのメッセージありがとうございましたー!
3/9 5:19 アビスの連載、頑張るルークが~ の方へ
拍手ありがとうございますー!
長編ルークは頑張り屋というか何でも抱え込んじゃうきらいがあるので、自分でも「ああもうこの子どうしてくれよう」と思うことがあります(^_^;) 今は孤立無援に近い状態だから、なおさら痛々しさばかりが目につくというかなんというか。多分そのうちに今は出ないアッシュや某意識集合体あたりにしわ寄せがいきます(笑)。
ちょっとひやひやな赤毛たちですが、これからも見守ってやっていただけるとありがたいですー!
3/12 22:51 birth-Re-birthとてもどきどきします!~ の方へ
あわわわ、そんな勿体ないお言葉をいただいちゃって……あ、ありがとうございますっ! 少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
brbももう少しでようやく「起承転結」の「起」が終わるので(まだそこか)、今のてんでばらばらな状態からもうちょっとまとまりが見え出すかなと思います。本格的にあれこれ動き出すのは「承」から……かなぁ。まだお髭さんも出てませんしね!
かたつむりに鼻で笑われそうなほど遅い更新速度ですが、とりあえずはアッシュ召喚を目標に頑張りますのでっ。
どうか、これからもよろしくお願いいたします。
3/16 1:51 管理人様お元気ですか?~ の方へ
わわ、メッセージありがとうございます! 労わっていただいてありがたいやら申し訳ないやら……ずっとサイト、ほったらかし状態ですみませんでした。今週からはまたきりきり励みますっ。
なんというか、気持ちの上ではbrbなどはもうお髭の人とか登場してかなり先に進んじゃっているつもりなのですが、書くスピードがそれに追いついていないのが実情です……;; うーん、どこかに文才が転がっていないものか……。
更新楽しみにしてくださっているということなので、その言葉を励みに頑張っていきますねっ。これからもお付き合いいただけると幸いです\(^o^)/
一言レス>
2/23 合宿いってらっしゃい~ の方へ
メッセージありがとうございます! 返事が遅くなってしまって申し訳ありません……。
おかげさまで、道中は何事もありませんでした。……着いてからが大変でしたが;;
……っていうか、合宿の話題出した時点で返事の遅さに自分で愕然としています。あう……。
本当にごめんなさいっ。そして、温かな言葉をありがとうございましたー!
3/1 さな様へ
わわ、お久しぶりです! というか、返事が遅れてごめんなさい……。
はい、確かに合宿先は寒かったです……いや、あれは四国が云々という以前に、あの合宿先に問題があるような気が……(以下自粛)。関東住まいで鍛えられたのかわたしは大丈夫でしたが、同室の子たちが寒い寒いと震えておりました(^_^;)
合宿先から実家までの道中はひやひやしていましたが、携帯が充電切れを起こした以外は特に何事もなく、なんとか無事に着くことができました。気遣っていただいてありがとうございます。
しばらくサイト放置気味だったので、これからまた頑張るぞ! とただいま意気込んでいるところです(#^.^#)
もう暦の上では春とはいえ、まだところによっては寒かったりするようなので、さな様も体調などに気をつけてお過ごしください。
優しい言葉、本当にありがとうございましたっ!
この他にも、アップルグミをくださった方々、ありがとうございましたー! もしゃもしゃと食べて次の更新への励みにさせていただきますっ。