赤いものが、幼馴染の顔に飛び散った。頬にも、眼鏡にも。
ピオニーの記憶にある限りほとんど無表情か興味のなさそうな色ばかり浮かべていたその面が、今だけは茫然とした様子で、彼の正面に立つ者を見上げていた。その傍らに座りこんだ洟垂れも同じようなものだ。
「――2週間だ」
響いた声は、たった今自分の手首を切りつけた者とは思えないほどに、冷静で静かだった。
「その間に『それ』を分析しろ。2週間後に、また来る」
言い捨て、青年はくるりと踵を返し、こちらに向かってきた。ピオニーの脇を通りすぎ、さっさと部屋から出ていく。
未だ茫然自失とした幼馴染たちとどちらを優先すべきか束の間迷って、ピオニーはその後を追った。廊下を足音も荒く遠ざかろうとする背中に声をかける。
「先生!」
声は無視された。相当苛立っているらしい。
ピオニーは距離を詰め、血を流す方とは反対の腕をつかんだ。
「っ、クラウド!」
青年は足を止めた。金の頭が振り返る。
ゆっくりとこちらを振り見た青の瞳が苛烈な色を宿していることに気づき、ピオニーは怯んだ。一度視線をさ迷わせ、そしてうなだれる。
「……その、すまなかった。本当はオレたちのするべきことなのに」
「――ほんとにな」
ようやく返された声は限りなく低く、冷たかった。
「子供じゃないだの何だの言いながら、この体たらくは何だ。どうして、こうなる前にあんたが止めなかった? 皇太子が、部下の不祥事を一般人に……それも一介の運び屋なんかに尻拭いさせてどうする。おれはあんたたちの子守り役でもマルクトの家臣でもないんだぞ」
「……本当に、すまない」
淡々とした声が耳に痛い。
顔を上げることができず、ただひたすらに謝り続ける。
そうしていると、頭上でふうと息をつく気配がした。
「……もう、あんなことをさせないでくれ」
吐息にまぎれるようにしてつぶやかれたその言葉の方が、直前の叱咤よりよほどピオニーを打ちのめした。
頭を下げたその姿勢のまま、こみ上げるものをこらえて、床を睨みつける。
視界の端にある青年の手から、また1滴、赤いものが滴り落ちた。
mixで、雪国組(ピオジェイサフィ)とクラウド。ジェイドとサフィールが違法な研究に手を出そうとしたところをクラウドに止められたらしいです。雪国組が二十歳前後のお話。え、ヴァンてんてー? どっかその辺にいるんじゃないですか(何その適当さ)。クラウドがどうして手首を切ったのかなどの事情はそのうちmixででも。
今頭の中がmixとピノキオで埋め尽くされています。ピノキオは副専攻の課題。本当は悠長にこんなことを書いている場合じゃない。
休み中に何がしかできるかしらと思っていましたが、なんか、全然休みなかった。ピノキオ、何気にまだ翻訳し終えていないんですが、本当これどうしよう。