『セフィロス喜べ、ミッションだ。今すぐヴィンセント宅へ侵入し、ダブルベッドを奪取してこい。ほら、ラルゴさんにもらったのに使ってないあれ。ついでに奴がまだ寝てるようなら、奴の棺桶に穴あけてやるのも忘れずによろしく。あ、ダブルベッドは、書斎の隣の空き部屋に放り込んでおいて』
受話器を持ち上げたとたんに流れてきた相棒のセリフは、読書中だったセフィロスを混乱に陥れるのに十分足るものだった。
ヴィンセントはともかく、なんでダブルベッドなんぞを奪ってこなければいけないのだ。
「すまん、クラウド。話がさっぱり見えないのだが」
『大丈夫。あんたはただミッションを遂行すればいい。三十分後にはそっち着くから、それまでに頼むな。ちなみにこのミッション、重要度Sだから』
……つまり、遂行しなければ地獄が待つということか。
言いたいことだけ言って一方的に切れた電話をしばし睨みつけ、セフィロスは本を置いてしぶしぶ踵を返した。壁に掛けてあるマスターキーを取って、玄関に向かう。
ヴィンセントの部屋は同じアパートの二階なのだから、どうせすぐに行けるだろう。そもそも、ここで逆らえば後が怖い。
「しかしダブルベッドとは……またペットでも連れ帰る気か」
セフィロスは部屋を出ながらひとりごちた。ついでに今までのペット騒動の数々が頭をよぎり、一気に気分を急降下させる。もう、あのような面倒事は勘弁してほしいのだが。
深々とため息をひとつ。すっかり吐ききってから、きり、と眼光も鋭く顔を上げる。
とりあえず、まずはダブルベッドだ。ヴィンセントの棺桶もぶち破って、当人を引きずり出してやらねばならない(だってあの幽霊が起きているはずがない)。合成金属でひそかに強化されたあの棺桶を破るのは相当の手間だろうし、寝ぼけたヴィンセントは当然カオス化するだろうから、戦闘も避けられない。はたして三十分以内にけりがつくかどうか。
目の前に横たわるそれらの問題を無事に終えてから、その上で、ダブルベッドの使い道については思いを馳せることにしよう。
心の中でひとまずの整理をつけ、セフィロスは階段を下りはじめた。片手に固く、正宗を握りしめ。
その三十分後。
凄惨な戦いを潜り抜け、見事ミッションを果たした彼は、幼い赤毛の双子に出会うことになる。
それは彼の日常が色づき始める、小さな小さなきっかけ。
出来心で書き始めたら、ちょっとえらいことになってしまいました小話。mix「たとえば~」の、双子に出会う直前のセフィロスさん。ヴィンセントさんは強化棺桶で寝起きする人らしいですよ。寝起きが悪すぎて、いつもクラウドが仕事に出る前に(文字通り)たたき起こしてあげています。カオス化なんて日常茶飯事らしい、そんなアパート生活。囲碁友達のラルゴさんは、棺桶で寝るヴィンさんが不憫で使い古しのベッドくれたそうです。いい人。
短い割にやたらに内容が濃いですね。ついでにこれ読めば、「たとえば~」がどんな路線でいくかが大体想像つくというものです。色々と突っ込みどころがありすぎますが、そこは気にしないでいきましょう(おい)。
この間書店で「断章のグリム」最新刊を立ち読みして以来、「シメキリシメキリ、レポートレポート」とささやきながら追いかけてくる、白いのっぺらぼうのスライムな狼さんが夢に登場し続けています。い、いろいろな意味で怖いんだけど、こうして書いているとギャグに思えてくるのはなぜでしょう……。最後の方の、狼さんが化けて「開けて開けて」ってセンターの扉を叩いてくるシーンはインパクトありすぎでした。あのシリーズ、買わずに全部立ち読みで済ませているけれど(本屋さんの敵がここに!)。
ええと、本日、実はもうひとつサイト(?)を立ち上げてしまいました。ブログサイトで、お題配布サイト。でも、自分のところで使わないお題ってそれはそれでどうなんだろう……。時たま、気が向いたときに更新する程度のつもりなので、たぶんこっちの更新速度に支障は出ないんじゃないかしら……。見かけた場合は「あらあら」と笑って流してくださるとうれしいです。うん。
追記ですみません。
サイト5000hit&ブログ600hitありがとうございますー! これもあれもここに来てくださる皆様のおかげです。ほんと。
当初、こんなにたくさん人が来てくださると、本当にまったく考えていなかったので、予想よりうんと早く5000いったことにひたすらびっくりして平伏しております。ななななんかもう、ほんとうに、ありがとうございます……!
企画はなるべく早くアップしようと思っておりますので、しばしお待ちくださいー!