1/365 days
「サーセフィロス!」
「お前は先に戻っていろ」
睨むように宝条を見据えたまま、セフィロスが早口で命じる。
「でも、まだ書類が」
「いい。オレが渡しておくから」
書類を取り上げながら有無を言わせぬ力で肩を後ろへと押しやられ、仕方なくクラウドは元来た道へと体を反転した。
何度も振り返りながら、それでも相当気味悪かったのだろう、足早に遠ざかっていく後ろ姿をしばし眺め、セフィロスは目の前の男へと向き直った。同じように少年を見送っていた男が、残念そうに顔を顰めてうそぶく。
「お前が私に会う用事があったとは知らなかったな」
「オレが用事があるのはそこの扉の向こうであって、お前じゃない。それと、あれをあまり脅かさないでもらおうか。お前と違って健全なのでな」
投げつけられた絶対零度の言葉を気に留める様子もなく、それどころか「おや」とわざとらしく目を見張りすらし、男は面白そうにセフィロスを見上げた。
「お前が何かに執着するとは珍しいこともあるものだ」
「どこをどう聞いたらそうなる」
「まあ確かに、あの兵士は興味深い。あれほど魔晄適合率の高い者はめったにいなかろう」
セフィロスは不快感に眉を顰めた。相変わらず、人の話を聞かない男だ。
しかしそれよりも、会話の中に登場した単語の方が気にかかった。
「ソルジャーになる者は皆、魔晄への適性が高い者ばかりではないのか」
「適合率は適性とは違うのだよ、セフィロス」
男は眼鏡を押し上げながら含み笑いを漏らす。
「適性が高いからといって、適合率が高いとは一概には言えない。むしろ、適合率は無いに等しい者がほとんどだ。そういう意味では、あの兵士――ストライフと言ったか、あれは実に興味深い」
笑い続ける男を前にし、セフィロスは溜め息をついて苛立たしさに軽く頭を振った。この男と一言交わすたびに、体力と気力とを無駄に消費している気がする。
そのセフィロスの内心に気づいているのか、いないのか。
男はようやく笑いを収め(それでもまだ目にいやらしい光が残っている)、セフィロスをレンズ越しにしげしげと眺めまわした。
「もっとも、お前にはそんな研究意欲はないようだが」
「わかっているなら、わざわざ口に出すな。無能が移る」
さすがにこの言葉は効いたか、男はへの字に口を結んだ。
が、すぐにまたあの嫌な笑いを浮かべる。
「飽きたら是非とも私に譲ってくれたまえ。良い実験体になりそうだ」
セフィロスは額の皺を深くしただけで応じず、さっさと用事を済ませようと扉へと身を翻した。
会話の打ち切りを宣言するその背中に、粘着質の声がまとわりついた。
「だいじなものは手放さないようにしたまえよ、セフィロス。後に悔いても遅いからな」
どこかふざけた調子の言葉に振り返るかどうか束の間迷ったものの、セフィロスは扉の取っ手を掴んだ。
「…余計なお世話だ」
声からにじみ出る不機嫌さを覆い隠すように。
錆びついた音を立てて背後で扉が閉まった。
ネタがなくなるとお蔵出しに走ります。なんてやつだ。
そんなわけで、数年前のネタからちょっと。多分セフィクラ出会い話の中の一シーンで、宝条センセとセフィロスさん。うっかり宝条センセにちょっかい出されかけたクラウドをセフィロスが救ってあげたんじゃないだろうか。そのうち使いまわしされることと思います。
かねてから思っていたことだけれど、ここ数年の自分が書いた文章の変遷がひどすぎる気がします。そして、昔の方が、今よりはもうちょっとだけ理想に近い位置にいた気がする。うーん、単なるないものねだりなのかな……。
長編、てこてこやっていますが、ウイルスのことがあるので、完成しても更新するべきかどうか悩んでいます。落ち着くまではFTP使わない方がいいのでしょうかやはり……。
あり得ないとは思いますが、もしかすると15話書き上げたら、最悪、このブログに載せる、という形になるやもしれません(その場合、文字数制限に引っ掛かりそうな気がする)。何にしても、まずは様子見ですけれどねー。
本当はネタがないというほどでもないのですが、今は全部愚痴になりそうだなあと思うので、やめておきます。まああれです、血祭り一日目とバイトとうっかりミスのトリプルアタックは色々と痛かった。
「お前は先に戻っていろ」
睨むように宝条を見据えたまま、セフィロスが早口で命じる。
「でも、まだ書類が」
「いい。オレが渡しておくから」
書類を取り上げながら有無を言わせぬ力で肩を後ろへと押しやられ、仕方なくクラウドは元来た道へと体を反転した。
何度も振り返りながら、それでも相当気味悪かったのだろう、足早に遠ざかっていく後ろ姿をしばし眺め、セフィロスは目の前の男へと向き直った。同じように少年を見送っていた男が、残念そうに顔を顰めてうそぶく。
「お前が私に会う用事があったとは知らなかったな」
「オレが用事があるのはそこの扉の向こうであって、お前じゃない。それと、あれをあまり脅かさないでもらおうか。お前と違って健全なのでな」
投げつけられた絶対零度の言葉を気に留める様子もなく、それどころか「おや」とわざとらしく目を見張りすらし、男は面白そうにセフィロスを見上げた。
「お前が何かに執着するとは珍しいこともあるものだ」
「どこをどう聞いたらそうなる」
「まあ確かに、あの兵士は興味深い。あれほど魔晄適合率の高い者はめったにいなかろう」
セフィロスは不快感に眉を顰めた。相変わらず、人の話を聞かない男だ。
しかしそれよりも、会話の中に登場した単語の方が気にかかった。
「ソルジャーになる者は皆、魔晄への適性が高い者ばかりではないのか」
「適合率は適性とは違うのだよ、セフィロス」
男は眼鏡を押し上げながら含み笑いを漏らす。
「適性が高いからといって、適合率が高いとは一概には言えない。むしろ、適合率は無いに等しい者がほとんどだ。そういう意味では、あの兵士――ストライフと言ったか、あれは実に興味深い」
笑い続ける男を前にし、セフィロスは溜め息をついて苛立たしさに軽く頭を振った。この男と一言交わすたびに、体力と気力とを無駄に消費している気がする。
そのセフィロスの内心に気づいているのか、いないのか。
男はようやく笑いを収め(それでもまだ目にいやらしい光が残っている)、セフィロスをレンズ越しにしげしげと眺めまわした。
「もっとも、お前にはそんな研究意欲はないようだが」
「わかっているなら、わざわざ口に出すな。無能が移る」
さすがにこの言葉は効いたか、男はへの字に口を結んだ。
が、すぐにまたあの嫌な笑いを浮かべる。
「飽きたら是非とも私に譲ってくれたまえ。良い実験体になりそうだ」
セフィロスは額の皺を深くしただけで応じず、さっさと用事を済ませようと扉へと身を翻した。
会話の打ち切りを宣言するその背中に、粘着質の声がまとわりついた。
「だいじなものは手放さないようにしたまえよ、セフィロス。後に悔いても遅いからな」
どこかふざけた調子の言葉に振り返るかどうか束の間迷ったものの、セフィロスは扉の取っ手を掴んだ。
「…余計なお世話だ」
声からにじみ出る不機嫌さを覆い隠すように。
錆びついた音を立てて背後で扉が閉まった。
ネタがなくなるとお蔵出しに走ります。なんてやつだ。
そんなわけで、数年前のネタからちょっと。多分セフィクラ出会い話の中の一シーンで、宝条センセとセフィロスさん。うっかり宝条センセにちょっかい出されかけたクラウドをセフィロスが救ってあげたんじゃないだろうか。そのうち使いまわしされることと思います。
かねてから思っていたことだけれど、ここ数年の自分が書いた文章の変遷がひどすぎる気がします。そして、昔の方が、今よりはもうちょっとだけ理想に近い位置にいた気がする。うーん、単なるないものねだりなのかな……。
長編、てこてこやっていますが、ウイルスのことがあるので、完成しても更新するべきかどうか悩んでいます。落ち着くまではFTP使わない方がいいのでしょうかやはり……。
あり得ないとは思いますが、もしかすると15話書き上げたら、最悪、このブログに載せる、という形になるやもしれません(その場合、文字数制限に引っ掛かりそうな気がする)。何にしても、まずは様子見ですけれどねー。
本当はネタがないというほどでもないのですが、今は全部愚痴になりそうだなあと思うので、やめておきます。まああれです、血祭り一日目とバイトとうっかりミスのトリプルアタックは色々と痛かった。
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